重要性を増す「チートコード対策」
ブロードバンドの普及を背景に、オンラインゲーム市場が急速に拡大している。
その最大の魅力は、やはりユーザー間でコミュニケーションを楽しめること。
文字ベースのチャットに留まらず、たとえば共に戦い、冒険することで、親交を深めているプレイヤーも多いことだろう。
しかしその一方で、運営側もこれまでにない種類の苦労をするようになった。
ユーザー間のトラブルを未然に防ぎ、ゲームバランスを一定に保ち、
悪質なユーザーを排除し……と、パッケージソフトの“売り切り”では考えられなかった責任が要求されるようになった。
世界最大のユーザー人口と言われるMMORPG「リネージュ」を日本で運営する、エヌ・シー・ジャパン。
同ゲームはアクティブユーザー9万人、同時接続ユーザー数2−3万人を誇っており、オンラインゲームの草創期から事業展開を行ってきた。
【ユーザーにも求められる意識】
エヌ・シー・ジャパンの担当者は、オンラインゲームをプレイする上で、マナーも含めたルールの整備が今後進む、と指摘する。
「仮想世界での人間関係のあり方について、多くの人が意識してルールを作らなければならないだろう。
たとえば、社会学の教授がもっと積極的に発言をする……という状況があっていい。」
“ネットゲーム先進国”の韓国では、この種の議論が日本より盛んだという。
オンラインゲームをプレイする上で、気をつけるべき問題の1つに「チートコード」がある。※チート=だます、不正行為をする。
チートコードは、従来のパッケージゲームであれば“裏技”として扱われ、ユーザーにとって楽しみの1つだった。
しかしオンラインゲームでは、事業者による取締りの対象となる。理由は、ほかのユーザーに影響をおよぼすためだ。
たとえば、お金(またはそれに相当するアイテム)を無限増殖できるチートコードがあったとして、それが1人のユーザーだけに完結する問題なら、事業者も気にしないだろう。
しかし、それによって物価が変動し、特定のアイテム購入が困難になるようなゆがみが周囲に影響してくるようなら、運営側も対応せざるをえない。
「ゲームバランスが崩れると、ゲームの世界全体の問題になる。
なにより、健全にオンラインゲームを楽しんでいるプレイヤーがやる気をなくしてしまうだろう」(エヌ・シー・ジャパン担当者)。
これは、今回の特集で話を聞いた事業者、全社に共通する見解だった。
各プレイヤーは、こうした意識を高めておきたいところだ。
ひとくちにチートコードといっても、その種類は多様。おおまかに分類すると、以下の3つのようなものがある。
1.ユーザーのPCで持っているメモリを改ざんする。
たとえばクライアント側で保有するアイテム情報「01」を「100」などに変更するというもの。
それによって、なんでもないアイテムが希少アイテムに変化したりする。
2.クライアント−サーバ間の通信パケットを加工する。
たとえば「10のダメージを与えた」という情報をサーバに送る前に、別のデータを一枚かませて「1000のダメージを与えた」と偽装してしまうこと。
3.クライアント側の実行ソフトウェアを変更する。
たとえば実行プログラム上でキャラクターのパラメータを書き換えてしまい、“ドーピング状態”のキャラを操作するというものだ。
しかし、エヌ・シー・ジャパンはこうしたチートコードのいずれに対しても、きちんとした対策を講じているという。
各手法に対する、エヌ・シー・ジャパンの基本対策は、以下のとおりだ。
まず、クライアントマシンの保有するメモリ関連のチートに対しては、変更を認識しだい、クライアントが自動停止する。
サーバ側ではログアウトの処理が行われ、プレイヤーはゲームからはじかれることになる。
通信パケットの加工は、通信の暗号化を施すことで、これを防ぐ。
偽装データを付加する対象となる、プレーンなデータをさらさないことが重要となる。
プログラム自体の改ざん対策としては、独自の圧縮フォーマットを採用している。
ユーザーがソフトウェアの中身をのぞき、いじることができないようにしているという。
ネット上には、チートを助長するようなハッキングツールも数多く配布されている。
こうした技術の動向をチェックし、常に対応をはかることも重要だ。そもそもリネージュは、韓国で誕生して以来5年になる。
その間、多くのチート行為を試みられ、そのつどバージョンアップによって対応してきた。
また、不正行為を行ったプレイヤーには厳しい対処が行われる。
担当者は、リネージュがこうしたノウハウを蓄積していると話す。
「システムの強固さは、業界トップクラスだろう」(エヌ・シー・ジャパン)。
【ゲームバランスは、重要な評価軸】
ほかにも、同社はゲームバランスに関するバグフィクスを随時行っている。
たとえば、「この地域にいるモンスターがよく落とすアイテムを、別の地域に持っていって売りさばくと、短期間で多くのお金を得られる」といった循環があった場合、
それがあまりに問題あるようなら、アイテムドロップ率の調整も検討しなくてはならない。
もっとも、これが“ハイテクニック”に属する部分なのか、バクの悪用なのかは難しいところ。
担当者は、この判断は慎重に行う必要があると話す。
「全てに言える事だが、まずは、ユーザーが本質的に何を楽しむかを考えることが重要。」
同氏は、この種のノウハウや運営体制は、ゲームを評価する上でもっと注目されていいと話す。
「マスコミは、キャラクターのかわいさとか、シナリオとか、目新しいゲームシステムなどに焦点をあてたがる。
しかしゲームを長く続け、ユーザーが継続して楽しんでもらうには、運営の部分がとても重要になっている」。
リネージュはその点でも、非常によくできたゲームだと強調した。
ZDNetから引用:
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